虫歯や歯茎の病気の予防策「アークカリエスフリープログラム」
カリエスフリープログラムをつくった理由
私が矯正歯科医を志したきっかけは、一般歯科治療(虫歯の治療、歯茎の治療、かぶせる治療など)を歯列や咬合の悪い状態で行っても再発をくり返す可能性が高いということでした。患者さんの努力やドクターの情熱を持ってしてもこれを防ぐことは難しいかもしれません。より良い歯科治療を目指すには正しい歯列や咬合が不可欠であることを認識し、大学の矯正歯科研究室の門をたたきました。そして日進月歩の矯正歯科治療を深く学ぶに連れ、一般歯科治療に対しても同じ時間と情熱を割いて両立させることは困難であると気が付き、矯正歯科の道に専念せざるを得ませんでした。
しかし、口腔内の健康を守ることが体の健康に通じるという、歯科医療の大切な意義を忘れることなく、その一端を担う責任感は常に感じていました。矯正歯科治療がただの審美性の追及だけでなく健康を保つ環境作りであるために、虫歯や歯茎の病気の予防に力を入れ、医療としての価値をさらに高めることを考えてきました。そのひとつとして全ての方に予防指導の効果が得られるよう個人に合わせた歯磨き指導を行ってきましたが、それでも生じる個人差をどう解決するかが大きな問題でした。これは個人のカリエスリスク(虫歯にかかる危険度)の違いと家庭でのケアーの違いがあるからで、ここを我々がカバーすることができれば、全ての方に対し高い予防効果が生まれると考えたのです。
今までの「予防=歯磨き」の概念では、ご家庭でのケアーに重点が置かれ過ぎていて、長く続けられなかったり諦めてしまう方もいらっしゃったように思います。 虫歯予防の科学的根拠に基づいた我々の院内ケアーとキシリトールガムやフッ素入り歯磨剤の活用を含めることでこの点を解決し、幼児から大人まで受け入れ易さを考えて生まれたのがアークカリエスフリープログラムです。
カリエスフリープログラムの流れ 1. リスク診査●個人個人の齲蝕感受性を把握する為に唾液検査を行う。
●カリエスチェック(DMF歯数、白濁 C0の有無)
→今後の指標とする為、部位ごとに詳しくスケッチする。
●食事内容、生活習慣、フッ化物使用頻度について問診
●矯正治療の受容度
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2. リスク診断●診査結果を基にレーダーチャートを記入し、ABCの三段階評価を行いホームケアとプロフェッショナルケアからなるカリエスフリープログラムを作成する。
その後、患者さんと保護者に対してカウンセリングを行いながら
1.何がリスクファクターになっているのか?
2.リスクファクターとなっている項目をどう変えることができるか?
3.カリオロジ?に基づいた齲蝕予防とホームケア(フッ化物)の重要性
以上を話し合い、今後の方針について確認する。
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3. カリエスフリープログラム(診断後約一ヶ月間)矯正装置装着前にできるだけリスクを低くする事を目標に取り組む。
ホームケア内容●事前に渡しておいた歯ブラシセットを使用し、毛先磨きを中心とした方法で効率良くプラークが落とせるよう練習する(初回60分、以後30分間の指導を2〜3回実施)
●フッ化物の使用法の指導(歯磨剤またはホームジェルを使用する)
●食事指導(特に間食のだらだら食いや甘味の取り方について)
●PMTC、スケーリングを行う
●フローデンAを使用しフッ素塗布を行う
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カリエスフリープログラムの実施後、初診時から変化した可能性がある項目(食生活、フッ化物の使用、ブラッシングテクニック)を再度診査し、装置装着に支障がないか判断する。結果が不良の場合は衛生士を担当制にし、マンツーマンの指導を行う。
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5.カリエスフリープログラム(矯正装置装着後)ホームケア内容
歯ブラシの他にフロスや歯間ブラシ、プラウトといった補助用具の使用法を追加して指導
プロフェッショナルケア
リスクA判定:6ヶ月ごとのPMTC、フッ素塗布
リスクB判定:3ケ月ごとのPMTC、フッ素塗布
リスクC判定:1ケ月ごとのPMTC、3ケ月ごとのフッ素塗布
以上のプログラムをリスクに応じて実施していくが、半年1年と治療期間が経過するにつれ、モチベーションの低下や生活環境の変化でリスクが変化していく場合があるので、一応の基準ととらえて柔軟に対応していく必要がある。初診時 にチェックしておいた白濁やC0も判断の基準として経過観察をしていく。
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6.装置撤去後のカリエスフリープログラム保定装置装着後もリスク診査、リスク診断を行いカリエスフリープログラムを実行していきます。